※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.245>
資料 重いものは速く落ちるか?
●ガリレイの自由落下の実験
重い物体と軽い物体を同じ高さから同時に落下させると,どちらが先に地面に着くでしょうか。16世紀末,イタリアの科学者ガリレイは,それまで信じられてきた「重い物体ほど速く落ちる」という考えを科学的な実験によってくつがえしました。
ガリレイは斜面で鉄と木の球を運動させる実験を行いましたが,後の時代,イタリアのピサの斜塔のてっぺんから球を落下させて同時に着地することを示した話としてよく語られるようになりました。物体は,質量にかかわらず同じように落下するのです(右図(a))。
●真空中で鉄球と羽毛を落下させる実験
私たちは,日常経験から,鉄球よりもはるかに軽い羽毛が,ゆっくり落下することを知っています(右図(b))。といっても,ガリレイがまちがっていたわけではありません。ガリレイが明らかにしたことは,空気の抵抗力など重力以外の力がない場合(あるいは無視できるほど小さい場合)になりたちます。
右図(c)のように,真空に近づけた容器の中で実験を行うと,羽毛も鉄球も同じように落下することが確かめられます。
羽毛を落下させた場合は,受ける空気の抵抗力が鉄球に比べて非常に大きいため,ちがいが生じたのです。(羽毛は空気中で等速直線運動をしますが,その理由はp.246の資料「ここにも等速直線運動」を参照)
発展
重い物体ほど大きな重力を受けるので,速さの増し方は大きくなりそうだが,そうならないのはなぜだろうか。17世紀末にその理由を明らかにしたのは,ニュートン(イギリス)であり,次の式の中に示されている。
$$ 単位時間あたりの速さの変化 = \frac{力の大きさ}{質量} $$
この式が示す運動の法則の一つは,物体が受ける力が大きいほど速さが変化しやすい(→p.33)ことである。またそれだけでなく,「質量が大きいほど速さが変化しにくい」ことも示している。つまり,質量の大きい物体は,静止し続けようとする性質(慣性→p.37)が大きい。
重力による運動では,右辺の「力の大きさ」は重さであり質量に比例した大きさだが,右辺の分母が質量なので,右辺は一定の値になる。つまり,落下運動の場合,単位時間あたりの速さの変化は,質量にかかわらず一定である。地球上の自由落下の運動は,質量にかかわらず,1秒あたり9.8m/sずつ速くなり,この大きさは「重力加速度」とよばれている。