本のページをめくるときや,スーパーでふくろを広げるとき,指を少しなめて滑りにくくした経験はないでしょうか?これらの例のように,水には物体どうしの接着を強くするはたらきがあります。しかしその一方で,雨の日の高速道路ではスリップ事故が多発するように,水には物体の滑りをよくするという一面もあります。同じ物質にもかかわらず,滑りにくさと滑りやすさという相反する2つの性質は,どのように両立するのでしょうか?
一般に,水が物体どうしを『滑りにくく』するのは水の量が少ないとき,『滑りやすく』するのは水の量が多いときと説明されます。しかし,米アクロン大学の研究では,水が接着に与える影響は,これまでの“水の量で説明できる”という理論だけでは不十分であることを示しました。研究チームは,やわらかいゴム状の材料と,面のあらいダイヤモンドを使い,それらの接触面に水を注ぎ,物体どうしの接着力を測定しました。結果は,接近時には水が接着を弱める一方で,はがす際に必要な引きはがし力は理論予測の約4倍に増大しました。この現象は,ごく小さなスケールで考えると,あらい硬い面とやわらかい面が接触したとき,物体どうしの間には,多数の微小なサイズの水のポケットが形成され,注射器内に閉じこめられた水のように,押し引きに強く抵抗する効果があるためと考えられています。従来の説明である“薄い水膜は接着を助け,多量の水は滑りやすくする”という単純な二分法では,こうした微小なスケールでの効果は説明ができませんでした。
この結果は,ぬれた面にも強い接着力を示すヤモリの指先のしくみ解明や,水分の多い場所でもはたらく手術用接着剤,入浴中でもはがれにくいばんそうこうなど,水中や湿度の高い環境で機能する新しい接着材料の設計に役立つ可能性があると結論づけられています。
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