※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.220>
2|エネルギーの供給
1 電気エネルギーの供給
私たちの生活や産業に必要なエネルギーは,自然界にある石油,石炭,天然ガスなどのエネルギー資源によって支えられている(図11)。エネルギーは,主に電気エネルギーや,ガス・灯油・ガソリンなどの化学エネルギーとして私たちに供給されていて,特に電気エネルギーは,別のエネルギーへの変換が簡単であり,送電線で離れた場所へも送ることができる利点がある。このため,電気エネルギーは,最も利用しやすいエネルギーとして,いろいろなところで利用されている。
❶ 出典:経済産業省 資源エネルギー庁資料「エネルギー白書2022」
火力発電
発電方法:石炭,石油,天然ガスなどの燃焼による熱で,高温・高圧の水蒸気を発生させ,その力で発電機を回す。
長所:石炭,石油,天然ガスなどの地下資源を燃焼させるだけで,大量の熱を発生させて発電機を回すことに利用できる。
短所:地下資源の量には限りがあり,いつまでも利用し続けることはできない。しかも,これらを燃焼させると,地球温暖化の主な原因とされている二酸化炭素や,大気汚染の原因となる窒素酸化物や硫黄酸化物などのガスが生じる。このため,これらの有害な排出ガスをできるだけ少なくする技術が必要とされている。
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原子力発電
発電方法:原子炉の中で,ウランの原子核を分裂させる。そのときに発生する熱で高温・高圧の水蒸気を発生させ,その力で発電機を回す。
長所:ウランの原子核の分裂は,石油などの燃焼よりもずっと少ない量で大量のエネルギーを出す。また,発電の過程で二酸化炭素や有害なガスが出ない。
短所:ウランが地下資源として得られる量にも限りがある。また,原子炉の中で放射線が発生しており,慎重で万全の管理が必要である。さらに,長期にわたって放射線を出す廃棄物が生じるなど,解決しなければならない問題がある。
太陽光発電
発電方法:光が当たると電圧が発生する光電池を使って発電を行う。
長所:発電中に廃棄物や排出ガスが出ない。資源を輸入する必要がなく,ほぼ無尽蔵にある。
短所:まとまった発電をするには,広大な土地に光電池をしきつめる必要がある。また,天気や昼夜によって発電量が左右され,これだけでは常に一定の電力が確保できないため,ほかのしくみの発電方法と組み合わせて使う必要がある。
水力発電
発電方法:ダムにたくわえた水を管の中に流して,その力で発電機を回す。
長所:川の水をダムにためて使うので,ダムの上流に十分な雨が降る限り発電を続けることができ,有害な廃棄物が生じない。
短所:ダムの建設に適した地形のある場所には限りがあるため,今後も増やし続けることはできない。また,ダムをつくることにより,もともとあった自然を改変してしまうなどの問題がある。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.268>
資料 放射線を「観測」する
A いろいろな場所で放射線の強さをはかる
校舎の中,校庭,花だんなど,場所を決めて測定する。
B 放射線源を使って調べる
① 放射線源からの距離を変える。
・ 距離によって放射線の強さは変化するか。機器の数値を記録して比べる。
② 放射線源をしゃへいする。
・ しゃへいする物質によって,放射線の強さは変化するか。
③ しゃへいする物質の厚さを変える。
・ しゃへいする物質の厚さによって,放射線の強さは変化するか。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.268>
資料 放射線を「観察」する
① ペトリ皿の周囲にスポンジを貼り,ペトリ皿の中央に放射線源を置く。
② エタノールをスポイトでとり,スポンジにたっぷりしみこませて,ふたをする。
③ 断熱材の上にドライアイスを少量置き,その上に②の装置を置く。
④ 部屋を暗くし,LEDライトの光を②の装置の側面から当て,②の装置の上から放射線源のまわりのようすを観察する。
一般に「観察」は変化やちがいなどを注意深く見るとき,「観測」は,主に数値を計測,記録するときに使います。天文や気象の分野で「観測」をよく使うのは,数値を記録する作業が多いからですね。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.222>
2 再生可能エネルギー
現在,発電のために大量に消費している資源は,石油や石炭,天然ガス,ウランなどである。しかし,これらは,使い続ければ自然界からなくなってしまう(図16)。そのため,今あるエネルギー資源を有効に利用したり,新しいエネルギー資源を開発したりする努力がなされている。使い続けてもなくならないエネルギー資源を再生可能エネルギーといい,太陽光(太陽熱),風力,水力,地熱,バイオマスなどがある(図17)。
❶ 出典:経済産業省 資源エネルギー庁「令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022)」
❷ 出典:環境エネルギー政策研究所「2021年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)」
地熱発電
発電方法:マグマがもっている熱エネルギーを利用している。地下からふき出る水蒸気で発電機を回して発電する。
長所:発電中に廃棄物や排出ガスが出ない。
短所:地熱発電に適した場所の多くは,国立・国定公園の中にあり,開発には周辺の環境に配慮しなければならない。
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風力発電
発電方法:風の力を利用して発電機につながるプロペラを回して発電する。
長所:発電中に廃棄物や排出ガスが出ない。
短所:風の強さによって発電量が左右される。これだけでは常に一定の電力が確保できないため,ほかのしくみの発電方法と組み合わせて使う必要がある。
バイオマス発電
発電方法:植物などの生物体(バイオマス)の有機物を発電の燃料として利用する。木くずから固体燃料をつくったり,稲わら・木くず・古紙などからエタノール(液体燃料)をつくったりもする。また,生ごみや家畜のふん・尿からメタンガス(気体燃料)をつくる方法もある。
長所:ごみや家畜の排せつ物など,捨てていたものを資源として活用できる。カーボンニュートラルといえる(→p.234)。
短所:資源が広い地域に分散しているため,収集・運搬・管理に費用がかかり,小規模な設備になりがちである。
小水力発電
発電方法:特に規模の小さい,または出力が小さい(主に1000kW以下)の水力発電のことで,小河川・用水路・側溝・水道などの水流で水車を回して発電する。
長所:ダムなどの大規模工事が必要なく,自然環境への負荷が小さい。小さな水流でも発電できるので,工場・ビル・上下水道施設などでも発電可能。天候等による発電量の変動が小さい。
短所:機器の手軽さに対して,法的手続きや水を利用する権利などが複雑である。