※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.224>
3|身のまわりの素材・技術
1 プラスチック
私たちの身のまわりには,さまざまな物質が使われている。そのなかの一部は,もともと自然にはなく,科学技術を用いてつくられた物質であり,その代表例がプラスチック❶である。
プラスチックには,図18のようにいろいろな種類がある。これらの種類によって,じょうぶさや,熱や薬品に対する強さなどの性質も異なるため,利用する目的に応じて使い分けられている。
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2 新素材
科学技術の発展によって,新素材がつくられるようになった。その素材の良さを活用して,さまざまな道具や機器が生まれ,私たちの生活はさらに便利で豊かなものになっている。
身のまわりには,どのような新素材があるでしょうか。また,現在,研究中の素材には,どのような種類があるでしょうか。調べてレポートにまとめてみましょう。
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私たちの生活はコンピュータやロボットの発達によりどのように変化しているでしょうか。調べてレポートにまとめてみましょう。
4 私たちの生活と科学技術
近年,コンピュータやロボットが発達し,さまざまな産業で役立つようになった。私たちの生活は,常に変わり続けている。
5 科学技術の利用
科学技術やその利用には,長所ばかりではなく,短所が存在する。たとえば,科学技術の発達による公害や武器への利用などの問題である。
また,何が長所で,何が短所であるかの判断は人によっても異なり,状況が変われば「何が適切か」の判断も変わる。科学技術をどのように利用するか,私たちは,多様な考えをもつ人たちと話し合って決めてゆく必要がある。
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6 環境保全の取り組み
私たちの大きな課題のひとつが環境保全である。化石燃料の使用を抑制する社会構築を目指し,有害な物質を出さない再生可能エネルギーの開発や,化石燃料の効率のよい利用などに取り組んでいる。生活の身近なところでは,ごみの量を減らしたり,水や森林などの環境を守ったりする努力を続けている。
資源を効率よく利用する方法のうち,私たちの身近でとられている方法や,私たちがすぐに取り組める方法を調べてみましょう。また,その取り組みを続けるには,何が必要かも考えてみましょう。
❶ 工場や車などから出る窒素酸化物や炭化水素と紫外線が反応してできる複数の汚染物質。オキシダントの濃度が高くなると,景色が見えにくくなる光化学スモッグが起こる。
❷ 2022年3月29日環境省発表の2020年度時点数値。
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探究1 身のまわりの自然環境の調査
環境のちがいはどのように調べればよいのだろう。環境といっても目に見えないよね。どのようなことを調べれば環境を比べられるかな。
水が汚れているかどうかは,水に溶けているイオンなどを調べたらどうかな。
環境がことなれば,そこにすむ生物が変わってくるよ。生物を観察すればわかるかも。
どのような調査方法があるのか,資料を調べてみよう。
自分で課題と計画を立てて,調査を進めましょう。
調べることによって,環境に悪影響を与えないかにも気をつけます。
身近な地域の自然環境について,何をどのように調べたらよいか計画を立てて進めよう。
準備
マツの葉,顕微鏡観察用具,光源,セロハンテープ,計算機
自動車の交通量の多い地点ほど,気孔の汚れ率が大きいことがわかりました。
❶ ここでいう汚れとは,自動車などの排ガスにふくまれる粉塵である。
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探究2 人間活動と自然の影響の調査
〔課題例1〕 プラスチックとそれ以外の物質は,それぞれの長所や短所をふまえてどのように利用されているか。
〔課題例2〕再生可能エネルギーは,それぞれの長所・短所をふまえてどのように利用していけばよいか。
化石燃料をやめて,すべて再生可能エネルギーに切りかえれば,温室効果ガスが削減できてよさそう。でも,太陽光発電や風力発電は天気によって発電量が変わって,安定した電力供給が難しい。どんな解決方法があるだろう。
化石燃料は資源に限りがあるよね。また,輸入先の状況によっては値段が上がったり,売ってもらえなかったりする可能性があるかもしれない。でも,電気が必要なときにすぐに発電できる良さがある。もっといい利用方法がないかな。
ほかにも,右のようなテーマで進めてみましょう。
1 世界人口増加への取り組み
2 少子高齢化への 取り組み
3 日本・世界の食料問題
4 環境保全の 取り組み
5 気候変動への取り組み
6 健康と福祉への取り組み
7 プラスチック粒子の蓄積
8 人工知能の利用
日本は水が豊かだといわれるし,まわりは海という地理的な特徴がある。もっと水資源を使えないのかな?農業や工業,漁業,発電…。どんなアイデアがあるのだろう?
人工知能の発達により,私たちがしていた作業をプログラムやロボットがしてくれる。この関係が発展しつづけると,人間がやってきたことはどうなるのだろう?私たちと機械のちがいはなんだろう?
日本にも世界にも,いろいろな社会問題がある。大きな問題も気になるけど,わたしはまず,わたしがすんでいる地域の問題を調べて,よくしていきたいな。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.267>
資料 水生生物による水質調査
A 化学的な水質調査
簡易水質検査試薬を使って,窒素化合物の濃度(生活排水などによる汚れを示す1つのめやす)などを調べてみよう。
*は幼虫を示す。★は汽水域(海水と河川などの水が混じり合っているところ)の生物を示す。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.231>
7 自然の恵みと災害
日本列島は南北に細長く,周囲を海に囲まれていて,地形も変化に富んでいる。また,温暖で雨が多いことから,豊かな森林が形成され,そこをすみかとする動物も多い。一方,日本列島は世界の中でも地震や火山噴火の多い場所でもある。また,台風の通り道にもなっている。このことから,しばしば大きな自然災害にみまわれる。
私たちが持続可能な社会をつくっていくためには,自然の恵みを効率よく利用し,かつ防災・減災につとめて,自然災害による影響を最小限におさえていかなければならない。
探究3 自然の恵みと災害の調査
地震や火山による現象で,わたしたちの生活に被害が出ることを学んだね。
でも,地球の活動は地下資源や観光資源も生み出して,わたしたちにとって恵みにもなった。
雨は私たちの生活に欠かせない恵みだけど,降水量が多すぎても少なすぎても自然災害になるという多様な見方ができる。
わたしのすむ地域では,洪水が起きたときに備えて,危険な地区や避難場所をまとめた地図(ハザードマップ)を配っているよ。
身のまわりで自然の資源をどのように利用しているか。自然災害に対してどのような取り組みをしているか。調べて,より適切な対応を議論しよう。
日本は水が豊かだといわれるし,まわりは海という地理的な特徴がある。もっと水資源をよりよく使えないかな?農業や工業,漁業,発電…。どんなアイデアがあるだろう?
大災害が起こったときは,地域の救急や消防といった活動もできず,住んでいる人たちの助け合いがとても重要になるらしい。平時にどんな取り組みができるのかな?
そうか,ほんとうに大変なとき,だれかが正しいことを教えてくれるわけではなく,自分やまわりの人と,そのときどきで最善の判断をしなければいけないね。
ニュース
- 時代は『巻戻る』―大容量磁気テープの開発 2025年6月24日少し前ですが,ビデオデッキやラジカセなどの磁気テープを利用する機器と異なり,現在のレコーダーなどでは,『早送り』はあっても『巻戻し』は使われていないと聞いて,目を丸くしたことがあります(いまは『早戻し』の語が使われているようです)。たしかに,光学ディスクや半導体を使用した記憶装置においては,テープ時代の『巻く』という表現は何の関係もないので当然なのですが,長らく使われていた言葉がなくなってしまうことについては,何となく寂しさを感じてしまいます。ところが近年では逆に,磁気テープを使った最先端の技術によって,ひょっとすると『巻戻し』も復活をとげるかもしれません。 現代では,高画質の4K・8K映像や,ビッグデータと連携する生成AIの台頭により,デジタルデータの保存量は増加の一途をたどっており,これまでと同様の保存様式では不足が見込まれるようになっています。そこで,日米の企業が開発を進めている,大容量かつ低コストの磁気テープが注目を集めています。これは従来の磁気テープと同様,薄いテープ状のフィルムに粉末状の磁性体が乗っているもので,記録機器の磁気ヘッドを通過する際に磁気を変化させることで情報を記録するものです。アナログなテープのイメージに反し,従来のハードディスクよりも小型・大容量化に成功しており,ランニングコストでも上回るうえ,エラー発生率が低く,50年以上劣化しないという特性ももっています。この進化の背景には,原理はかつてと同じであっても,テープに散りばめる磁性体粒子のサイズ縮小や磁気特性の強化,より均一に磁性体粒子を分散させる技術の向上など,さまざまなくふうがあります。また,テープフィルム自体の素材もより薄く,じょうぶなものとなっていることもポイントです。 現在のところ,利用には専用ドライブが必要となり,導入コストがかかる問題はあるものの,磁気テープの復活とともに『巻戻し』の語がまた聞かれる日も訪れるかもしれません。 もと記事リンク(外部サイトに繋がります。公開から時間がたつと繋がらない場合があります)
- AIの力で『未来の自分』と話そう! 2025年6月18日時間を実際に飛び越えることはまだまだ難しい技術ですが,将来の自分と話すことは,近い将来できるようになるかもしれません。米MITの研究チームは,若者が未来の自分とのつながりを感じ,よりよい選択ができるよう導くためのAIチャットボット「Future You」の開発を進めています。 このシステムは,次の3つのステップで進みます。 1つ目は,生成AIを用い,ユーザーの顔写真をもとに,ユーザー自身の60〜70歳の姿を予測する画像生成を行います。この画像を用いることで,ユーザーは,将来の自分を視覚的にイメージできるようになります。 2つ目に,人口統計学的な情報(名前や職業,家族構成など)や性格診断データをもとに,未来の自分の人格データの背景を形成します。 最後に,生成された未来の人格データをChatGPTに取り込むことで,チャットボットとして未来の自分との対話が可能となります。 研究では,一般的なAIアシスタントを利用したグループに比べ,Future Youの使用者はメンタルヘルスが改善し,不安が減少するなどの効果が確認されました。このシステムを使うことで,未来の自分をどれだけリアルに想像できるか,今の自分と未来の自分とのつながりをどれだけ強く感じられるかという心理学的な指標が強化され,未来の自分のために健康習慣を改善したり,なりたい自分への努力をする意識を高めたりできることが示唆されています。 一方で研究チームは,Future Youは,あくまでも“今の自分をベースにして将来体験しうること”を可能性のひとつとして提示してくれるものであり,決して未来の予言ではないことを強調しています。また,ネガティブな質問によって未来の自分からマイナスのアドバイスが届いてしまうリスクも指摘されており,倫理的な側面からもさらなる改良が求められています。 もと記事リンク(外部サイトに繋がります。公開から時間がたつと繋がらない場合があります) 論文リンク
- ヒトの骨がセメントを強くする 2025年6月10日生物のもつ優れたつくりやはたらきを研究・応用した技術は,生物模倣技術(バイオミメティクス)とよばれ,注目を集めている分野です。生物模倣技術の対象は,他の生物にとどまらず,人間自身にも向けられることがあります。 ヒトの骨は,内骨格としての高い強度をもつ材質です。骨の高い強度は,おもに外側の硬い「皮質骨」によって実現されています。皮質骨は,その内部にバームクーヘンのようなだ円形の管状構造をもち,衝撃を受けて亀裂が生じた際,このバームクーヘン構造に沿って亀裂の進行を外側へと逃がすため,骨全体が一度に砕けるような破壊は起こりにくいという特性があります。米プリンストン大学の研究チームは,この構造を模倣し,新たなセメント系建材を開発しました。 従来のセメントブロックは,強度を高める際には,セメント以外の材料を追加する手法が一般的でしたが,今回の研究では,セメント自体で人間の骨の構造を再現することによって,耐久性を向上させました。すなわち,ヒトの骨のように,内部にだ円形の空洞を設けることで亀裂の拡大を防ぎ,衝撃のエネルギーを分散させるしくみです。その結果,亀裂に対する耐久性が従来のものと比較して約5.6倍向上しました。 また,この新構造は,空洞を設けることでセメントの使用量を削減できるため,作成時に出る温室効果ガスの排出低減にも貢献します。研究チームはこの構造の他素材への応用を視野に入れ,さらなる可能性を探っています。 もと記事リンク(外部サイトに繋がります。公開から時間がたつと繋がらない場合があります) 論文リンク
- 『宇宙サラダ』は安全か 2025年6月4日地球にいても宇宙にいても,野菜を食べることは健康の観点から非常に重要です。そのため,国際宇宙ステーション(ISS)では食用の植物が栽培されており,特に,レタスを栽培するプロジェクトは大きな注目を集めました。しかし,地球で安全な野菜は,宇宙でも安全だといえるのでしょうか。 ISSは,地球と同様に,食中毒を引き起こすサルモネラ菌や大腸菌といった細菌が生息する環境であることも知られています。ISSにおけるこれらの細菌と植物との関係を,米デラウェア大学が研究しました。それによると,ISSを模した低重力環境では,植物の細菌に対する防御機能が低下する可能性があることが明らかになりました。植物は地球上では,細菌の存在を感知した際に気孔を閉じることで感染を防ぐ機構をもちますが,低重力環境下では気孔が開いたままとなり,細菌に対する防御機能が低下することが確認されました。また,地球上では植物の細菌に対する防御をうながすはたらきをもつ根粒菌(植物と共生する微生物の一種)も,低重力下では十分に機能しないことがわかりました。つまり,食中毒を引き起こす細菌は,宇宙の無重力環境では,地球よりも植物を汚染しやすい可能性があることになります。 現在,研究者らは,植物の遺伝子に調整を行い,宇宙環境でも気孔を適切に閉じる品種を開発することで,食料生産の安全性を向上させる取り組みを進めています。この取り組みが成功すれば,宇宙産のレタスで安全なサラダを楽しめる未来が訪れるかもしれません。 もと記事リンク(外部サイトに繋がります。公開から時間がたつと繋がらない場合があります) 論文リンク
- まばたき発電で拡張現実の世界に 2025年4月28日たとえば,近所のスーパーに買い物に行き,食品を見るだけで,産地や消費期限,オススメの調理法までもが一緒に視界に映る…。こんな世界も,スマートコンタクトレンズを組み合わせた拡張現実(AR)技術の発展により,夢物語ではなくなってきています。しかし,このスマートデバイスは,眼球に直接装着するコンタクトレンズである以上,小型化・軽量化の問題をクリアすることが必須であり,特に,他のパーツに比べて小型軽量化の難しい電力供給システムをどうするかが,大きな課題となっていました。 この課題を解決すべく,米ユタ大学の研究チームは,スマートコンタクトレンズで機能する2種類の発電システムを開発しました。1つは,まばたきの際に生じる涙を利用するもので,涙にふくまれる電解質とレンズ表面の金属が触れることで起こる化学反応を利用し,電気を取り出すしくみです。まばたきという,誰にでも必ず起こる生理現象を利用していることは,ほぼノーコストで電気をつくり出せる非常に優れた着眼点といえるでしょう。もう1つの発電システムは,柔軟性のあるシリコン太陽電池を利用したものです。太陽電池は,まぶたに直接接することがないようコーティングが施され,太陽光以外の光源からも電力を得ることができます。「まばたき発電」と太陽光発電を組み合わせることで,まばたきをしているときにも,していないときにも,効率よく電力を得ることが可能とされています。 現時点ではまだ小さな電力しか生み出すことができませんが,さらなる改良によって実用化が期待されており,一見すると裸眼に見える人が,スマートコンタクトレンズを通じて電子の海から情報を得る未来は近づいているかもしれません。 もと記事リンク(外部サイトに繋がります。公開から時間がたつと繋がらない場合があります) 論文リンク