※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.56>
2|物質の体積と質量
日常では,鉄は重い,木は軽いなどという。しかし,軽い木もたくさんあれば鉄より重くなる。そこで,同じ体積でいろいろな物質の重さ(質量)を比べ,物質ごとのちがいを調べることにする。小学校で「重さ」とよんできたgやkgの単位で表される量を,これからは【質量】❶とよぶ。
物質1cm³当たりの質量をその物質の密度といい,次の式で求められる。密度の単位は,【グラム毎立方センチメートル】〔記号 g /cm³〕❷である。
\(密度〔g/cm^{3}〕=\frac{物質の質量〔g〕}{物質の体積〔cm^{3}〕} \)
物質の密度は,物質によって決まっている(図13)。
上皿てんびんは,分銅と比べることで質量をはかります。ただし探究2ではより簡単にあつかえる電子てんびんを使います。
❶ くわしくは,p.144で学習する。
❷ 「/cm³」とは,「1cm³当たり」という意味である。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.222>
資料 密度で犯人を探せ
紀元前3世紀,ギリシアの自然哲学者アルキメデスに,こんな逸話が残っています。
アルキメデスは,国王が職人に作らせた王冠が純金かを調べる仕事を依頼されました。それは,国王から渡された純金の一部を職人がぬすみ,それと同じ質量の安価な銀を混ぜて,国王から渡された純金と同じ質量にしてごまかしている──といううわさを国王が耳にしたからでした。銀を混ぜた金は純金と見た目の区別がつきづらく,また,国王が渡した純金と質量が同じなので,盗んだ証拠がつかめなかったのです。
アルキメデスは,よい方法がないか考え続けていたある日,町の共同浴場に行きました。浴そうにからだを沈めたとき,あふれ出る湯を見て,すばらしいアイデアが浮かびました。彼はうれしさのあまり「エウレーカ!(みつけたぞ!)」とさけび,はだかのまま家にとんで帰りました。
彼は,すぐに実験にとりかかりました。まず,王冠と同じ質量の金のかたまりを用意し,水を満たした容器に入れて,あふれ出た水の体積をはかりました。次に,同じようにして王冠も調べました。「もし,王冠が純金ならば,同じ体積の金のかたまりを入れたとき,同じ量の水があふれ出るはずだ」と彼は考えました。実際にやってみると,あふれ出た水の量は王冠の方が多く,王冠は純金ではないとわかったのです(右図)。
アルキメデスが利用した物質の性質は,金や銀といった物質がそれぞれ決まった密度(p.56)をもっていること,金と銀では同じ質量でも体積が異なることです。ただしそれだけでなく,複雑な形をした王冠の体積を調べる具体的な実験方法が必要でした。王冠を高温でとかして,金属のかたまりにもどすわけにもいきません。「水をはった容器からあふれ出た水の体積」は「物体の体積と等しい」,アルキメデスが共同浴場でひらめいたこのアイデアこそが,国王から依頼された仕事を達成する決め手となりました。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.57>
何かわからない物質であっても,密度を求めれば,その物質が何であるかを知る手がかりになる。これを利用して,未知の物質が何であるかについて,どのように科学的に探究できるだろうか。
p.240の例題で,密度の計算に慣れておきましょう。
探究2 物質名をつきとめる
ここにさまざまな金属製品があります。それぞれがどんな物質からできているか知りたい場合は,どのような方法をとるとよいでしょうか。
うーん,銅以外は全部同じような色で,見た目では区別がつかないね。
早速,密度の考え方が使えそうだね。
形や大きさがばらばらの金属の種類を,密度をもとに決めるには,どのようにすればよいか。
手で持ってみて,どちらが重いかで,比べられると思う。
びみょうな質量のちがいは,きちんとはからないとわからないよ。それに体積がちがったら,比べたことにならないよね。
密度を利用するには,質量と体積の両方の値が必要だね。
体積をはかるには,どうすればよいかな?
質量はどうやってはかろうか。
縦×横×高さでは体積が求められない形のものは,どうすればいいかな。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.58>
準備
密度測定用おもりなど,電子てんびん(または上皿てんびん),メスシリンダー,電子計算機,薬包紙
1.質量をはかる
電子てんびんで,密度測定用おもりの質量をはかる。
密度測定用おもりでなく,1円硬貨20枚くらいをまとめて使う方法もあります。
2.体積をはかる
メスシリンダーを使って密度測定用おもりの体積をはかる。
注意 おもりでメスシリンダーを割らないように,メスシリンダーを傾けて,おもりをすべらせるように入れる。
ポイント
へこんだ液面の下の面を見極めて,目盛りを1/10の細かさまで目分量で読む。
水面に白っぽい帯が見えるだけですけど,へこんでるんですか?
はい,実際は水面がへこんでいます。白い帯の下の縁が水面だと考えましょう。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.211>
基本操作 電子てんびんの使い方
電子てんびんを水平なところに置き,電源を入れる。
① 何ものせないとき,表示板の数値が0.00gになるようにする。
② 皿に薬包紙をのせて,表示板の数値を0.00gにする。
③ はかりたいものを皿にのせて,数値を読みとる。
注意!! 計量範囲をこえるものはのせない。皿を手で押したりしない。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.211>
基本操作 メスシリンダーの読み方
目的に合った容量のものを用意し,1目盛りの体積を確かめて,目盛りを読む。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.59>
ポイント
密度測定用おもりの質量と体積を記録して,密度を求める。
ポイント
密度測定用おもりは,どの物質からできているか。p.56図13と比較しながら考える。
測定用のおもりを,2つ,3つと増やして質量と体積を測定すると,密度はどのように変化するでしょうか。試してみましょう。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.60>
探究2 結果から考察する
実験の結果から,ある密度測定用おもりの密度を求めると,
\( 密度=\frac{20.1g}{7.4cm^{3}} =2.71…g/cm^{3}\)
となった。
この密度の値とp.56図13の密度を比べてみると,この密度測定用おもりはアルミニウムでできていると考えられる。
つまり,密度を調べれば,物質が何であるかを予想できるんだね。
私たちが「重い」「軽い」と言うときには,「質量」の話をしているときと,体積を同じとして「密度」の話をしているときがあるね。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.61>
2 密度と物質の浮き沈み
密度が水より大きい物質は水に沈み,密度が水より小さい物質は水に浮く。たとえば,鉄が水に沈むのは,鉄の密度が水の密度より大きいからである。また,木材が水に浮くのは,その密度❶が水の密度より小さいからである。
物質の浮き沈みは,液体どうし,気体どうしの間でも起こる。
(a)について,p. 56の図13で見てみよう。水銀13.5g/cm³,鉄7.87g/cm³で,鉄のほうが水銀より密度が小さい。だから,鉄が水銀に浮かぶんだね。
(b)〜(e)の場合も,浮き沈みする理由を考えて説明してみよう。
それぞれの物質の密度の例です。
油(菜種油) 0.915g/cm³
酢(酢酸) 1.05g/cm³
空気 0.00129g/cm³
水素 0.0000899g/cm³
二酸化炭素 0.00198g/cm³
●小数の割り算
① 割る数が整数になるように小数点を右に移し,割られる数の小数点も同じだけ右に移して計算する。
② 商の小数点は,割られる数の移した小数点にそろえてつける。
●小数のかけ算
① 小数点がないものとして計算する。
② 積の小数点は,かけられる数とかける数の小数点より下の桁数の数の和だけ,右から数えてつける。
❶ 木材の密度は,マツの場合で約0.5g/cm³である。
❷ 出典:理科年表
ニュース
※科学ニュースの更新は2025年4月を目処にはじまります。
- 【廃アルミから少ないエネルギーで高純度アルミを再生する技術が開発される】 2023年3月1日アルミニウムはリサイクル率が高いとされている金属ですが,実は一般に使われているアルミ製品はシリコンや銅などを含んでいるため,再生を繰り返すと次第に不純物の割合が増えて品質が低下し,用途が限られてしまうという問題がありました。 このたび,東北大などの研究チームが,不純物の多いアルミニウムから高純度のアルミニウムをリサイクルする方法を確立しました。不純物の多い廃アルミと純粋なアルミニウムをそれぞれ電極として電気分解することにより,アルミニウムの鉱石からアルミニウムを製造するよりも少ないエネルギーで,99.9%の高純度のアルミニウムを製造することに成功。アルミニウムのリサイクルにおける品質低下の問題を解決すると期待されています。 もと記事リンク 論文