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2|光の屈折の利用
1 凸レンズを通る光の進み方
光の屈折を利用したものに虫めがねがある。虫めがねのように,中央をふくらませ,まわりをうすくしたガラスやプラスチックを【凸レンズ】という。
凸レンズを使うと,ものが大きく見えたり,逆さまに見えたりする(p.115図30)。これらはいずれも凸レンズによる像❶である。
2 焦点と焦点距離
図27のように,凸レンズの軸❷に平行な光を凸レンズに当てると,光は凸レンズの厚い方へ屈折して1点に集まる。この点を凸レンズの【焦点】といい,凸レンズの中心から焦点までの距離を【焦点距離】という。凸レンズは裏返しても同じはたらきをするので,焦点は凸レンズの両側にある。
❶ 鏡にうつった物体だけではなく,凸レンズで見た物体なども像という。
❷ 凸レンズの軸とは,レンズの中心の最も厚い部分を通り,凸レンズと垂直に交わる線である。光軸ともいう。
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図28 凸レンズを通る光の進み方の決まり
実際の光は,凸レンズに入るときと出るときの2回屈折します。ただし,作図するときは,凸レンズの中心線のところで曲がるようにかいてかまいません。
これ以外の光は,どうなっているのですか?
これ以外の光ももちろんありますが,たくさん光線をかくとわかりづらくなるので,ここでは3種類の光だけを説明しています。
3 像のでき方
図29(a)のように,凸レンズを使って,天井の電灯の像を机にうつすことができる。このとき,凸レンズと電灯の距離や,凸レンズと机の距離を変えると,像がはっきりしたりぼやけたりする。
凸レンズを通した先に像がはっきり見えるとき,「像ができた」という。図29(b)のように,光源から出た①〜③の光線の作図をすると,像がどこにできるかを知ることができる。
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私たちは,物体を大きく見るために凸レンズを使うことが多い(図30(a))。しかし,凸レンズで遠くの物体を見たときは,物体の見え方が変わる(図30(b))。
このような凸レンズの性質は,図29のような光線の作図で説明することができる。この決まりを科学的にどのように探究できるだろうか。
探究3 凸レンズによる像
図29では,凸レンズを上下させると,像のでき方がかわったね。机に近づけていくと,あるところで像がぼやけたよ。
どの凸レンズでためしても同じみたい。これも凸レンズによる像のでき方の決まりが関係しているのかな。
凸レンズによってスクリーンにできる像は,光源・凸レンズ・スクリーンのそれぞれの距離とどのような関係があるか。
物体の見え方に関係しているのは,物体と凸レンズの距離かな?それとも,物体と目の位置かな。
もっと細かく条件を分けられないかな。
像がぼやけるときや逆さまになるときは,それぞれ決まりがあるのではないかな。
凸レンズと光源の距離を変えて,そのときの像を調べよう。
凸レンズと光源の距離をはかりながら確かめたいな。どんな道具が必要だろう。
像は逆さまに見えることもあるよね。「どのような向きに見えるか」がわかるように,光源を工夫したいな。ただの丸いライトでは,像の向きの変化がわからないからね。
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この探究では,どのような操作をして,何を調べるのかな?
まず,光源と凸レンズを近づけておきます。光源の位置を変えずに,凸レンズを光源から離していきます。ア,㋑,ウ,㋓,オと凸レンズを離していったときに,できる像を調べます。
凸レンズをある位置に置いたら,像のできる位置を調べましょう。像のできる位置は,スクリーンを凸レンズに近づけたり,遠ざけたりすることで調べることができます。
準備
凸レンズ(焦点距離がわかっているもの),光学台,光源,スクリーン,ものさし
1.実験装置を組み立てる
光学台を組み立て,凸レンズの焦点距離の位置と,焦点距離の2倍の位置に印をつける。
2.スクリーンに像をつくる
光源を,焦点距離の2倍より離れたアの位置に置く。凸レンズは動かさずにスクリーンだけを動かし,スクリーンに像ができる位置を探す。像ができたら,次の4点を調べる。
- 光源と凸レンズの距離
- 凸レンズと像の距離
- 像の大きさ(像にものさしを当てて,光源の大きさと比べる)
- 像の向き(光源と同じ向きか,逆向きか)
実験を行う際に,ア,ウ,オの範囲では,光源をどこに置くか決めておくとよいでしょう。たとえば,凸レンズから焦点距離の2.5倍の位置をア,焦点距離の1.5倍をウ,焦点距離の0.5倍の位置をオ,とします。
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3.光源の位置を変える
光源を置く位置を,㋑,ウ,㋓,オと,凸レンズに少しずつ近づけ,2.と同じようにして調べる。
4.スクリーンに像ができない場合を調べる
スクリーンを動かしてもはっきりした像ができなくなったら,スクリーンをはずし,スクリーン側から凸レンズを通して光源を見る。
ポイント
像の見え方を表にまとめる。
ポイント
- 像のでき方にはどのような決まりがあるか。
- 像のでき方の決まりを光線の作図で表せるか。
像のできる位置を探すときは,光源とスクリーンを同時に動かさないようにしましょう。スクリーンを動かすときは,光源は動かしません。変える条件はひとつずつです。
光源を動かしながらスクリーンを動かすと,像がどこにできるかわかりづらくなるね。
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探究3 結果から考察する
図31 探究3の結果例
光源と凸レンズの距離によって像の見え方は3つに分けることができる。
- ア〜ウのとき,スクリーンに像ができる。光源が焦点に近いほど像は大きくなるが,像がうつるスクリーンの位置は凸レンズから遠くなる。
- ㋓のとき,スクリーンをどこに置いても像はできない。
- オのとき,スクリーンに像はできないが,凸レンズをのぞくと,光源が拡大されて見える。
光源もスクリーンも同時に見える位置から,見え方を考えます。ア,㋑,ウで,光源とスクリーンの像を比べると,上下も左右も逆になることがわかりますね。
㋑の場合に,像ができる位置を作図で説明するとこうなるね。
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3 実像と虚像
光源を凸レンズの焦点の外側に置くと,スクリーン上には光源の上下左右逆の像ができる。このように,実際に光源や物体からの光が集まってできる像を【実像】という(図33ア,㋑,ウ)。
光源を焦点の内側に置くと実像はできないが,凸レンズを通して光源を見ると光源が拡大されて見える(オ)。この像を【虚像】❶という。虚像は,実際に光源や物体からの光が集まってできるのではなく,そこから光が出ているように見えるだけである。
凸レンズを使って物体を 見ると,なんとなく, 遠くにある物体は逆さまで,近くにある物体は拡大されるんだと思っていました。はっきりした規則があるんですね。
凸レンズで遠くの景色を見たときに見える上下左右逆の像は実像です。凸レンズを通して,物体と同じ向きで拡大されて見える像は虚像です。
❶ 虚像の「虚」には,「存在しない」という意味がある。鏡にうつる像も,鏡から光が出ているように見えるだけなので虚像である。
ウェブアプリ
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資料 身のまわりの凸レンズ
身のまわりには,凸レンズの性質を利用したさまざまなものがあります。
たとえば,虫めがねは実物より大きい虚像が見えることを利用しています。また,ヒトの目は網膜に実像ができます。デジタルカメラでは光を感じる装置(撮像素子)上に実像ができます。
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資料 望遠鏡は凸レンズでできている
図(a)のように,(ア)の凸レンズでスクリーンにうつした実像を,(イ)の凸レンズで虚像として見ると,実像は拡大されて見えます。このとき,スクリーンを取り除いても同じように見えます。
このようなしくみを利用して作られた道具が望遠鏡です。図(b)のようにして,簡単な望遠鏡を作ってみましょう。
注意!! 望遠鏡で太陽を見てはいけない。