※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.76>
1|植物と水
1 植物が水を運ぶつくり
細胞が生命を維持するためには,水が必要である。植物の場合,根から地中の水が吸収され,その水はからだの中を運ばれて,それとともに生命の維持に必要な物質も運ばれる。
植物の根は枝分かれしながらしだいに細くなり,その先端近くには毛のように細い突起が数多く出ている。この突起を【根毛】といい,水などを効率よく吸収する役割がある。
根から吸い上げた水はどうなるのだろうか。植物が吸い上げた水のゆくえは,どのように科学的に探究できるだろうか。
図1 根毛の観察
探究3 植物が水を運ぶつくり
図2(a)のように,植物をポリエチレンの袋で包むと,すぐに袋の中に水滴がつきます。つまり,植物から水蒸気が出ていることがわかります。一方,(b)のように葉を取り除くと,袋の中に水滴はほぼつきません。
図2 葉の有無と蒸散
根で取り入れられた水は,葉から水蒸気になって出ていくんですよね。小学校で学習しました。
植物の葉には,水を運ぶはたらきをもつどのようなつくりがあるか 。
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植物の葉の中を水がしみこんでいくと思う。葉はスポンジみたいになってるのかな?
もし葉がスポンジみたいだったら,暑くて乾燥しているとき,水が全部出ていっちゃうんじゃないかな?
葉の中にも,水が通る管みたいなものがあるんじゃないかな?
葉の断面を観察しよう。
ただ観察しても,水がどこを通っているかわからないと思う。どうしよう。
顕微鏡で断面を観察するときは,試料をうすくする必要があるね。
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準備
A B ホウセンカの葉(ツバキ,サザンカ,キャベツなどの葉),三角フラスコ,植物染色剤,顕微鏡観察用具,はさみ,カッター,カッターマット,ペトリ皿
C ホウセンカの葉(ツユクサ,キャベツなどの葉),カッター,カッターマット,顕微鏡観察用具
観察A 根や茎の断面を双眼実体顕微鏡で観察する
① 染色液が吸い上げられやすいようにホウセンカの根の先端を切る。
② 植物染色剤を溶かした水に,約30 分ひたす。
③ 染色された根と茎を垂直な方向と,水平な方向に切る(写真は茎の例)。
④ 切片を多くつくり,乾燥しないように水に入れておく。うすく切れた切片をルーペで観察する。
注意!! カッターで,手を傷つけないように注意する。刃を自分の方に向けて切らない。
観察B 葉の断面を双眼実体顕微鏡で観察する
① ホウセンカを染色液で染める。
② 葉の断面を双眼実体顕微鏡で観察する。
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基本操作 (透過型)顕微鏡の使い方
一般的な顕微鏡では600倍くらいまで拡大できる。プレパラートを作成することで,試料の細かなつくりを観察できる。
注意!! 持ち運ぶときは,片手でアームをしっかり持ち,他方の手で鏡台を下から支えて持つ。
光源には,照明装置を使う形式と,反射鏡に光源装置(蛍光灯など)の光を反射させて使う形式があります。
ポイント
レンズがはずれている場合はレンズをはめる。このとき,接眼レンズ,対物レンズの順にはめて,鏡筒の中にごみが入らないようにする。レンズをはずすときは,対物レンズ,接眼レンズの順にする。
注意!! 絶対に反射鏡に直射日光を当ててはいけない。強い光が目に入り,目をいためることがある。
注意!! 必ず横から見ながら行う。対物レンズをプレパラートにぶつけてこわすことがある。
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① スライドガラスに水を1滴落とし,水の上に試料を置く。水中の小さな生物などは,水ごと採取する。
② 気泡(空気の泡)が入らないように,カバーガラスを端から静かに置く。気泡があると観察するときにじゃまになる。
③ カバーガラスからあふれた水はろ紙で吸い取る。カバーガラスのまわりに水があると,対物レンズに水がついてしまうことがある。
ポイント
試料は光が透過するようにうすくする。光が通りぬけられないと観察できない。
●顕微鏡の倍率
接眼レンズの倍率と対物レンズの倍率をかけ合わせた値が顕微鏡の倍率になる。たとえば,接眼レンズの表示が「10×」で,対物レンズが「4×」であれば,顕微鏡の倍率は10×4で40倍である。
●試料の探し方
① 観察するときは,はじめに低倍率で観察する部分を探す。次に倍率を上げて観察する。低倍率の方が視野が広いので,観察する部分を見つけやすい。
② 試料を視野の中央にくるようにするとき,「プレパラートを手で動かす向き」と,視野の中で「試料が動く向き」は逆になる。
ポイント
視野の明るさは,高倍率にするほど暗くなる。また,高倍率にするほど,レンズとプレパラートの距離はせまくなる。
ポイント
試料が見づらいときは右のような場合が考えられる。
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観察C 葉の表面を顕微鏡で観察する
① 葉の表皮をとる。
② 葉の表皮のプレパラートを作成し,顕微鏡で観察する。
ポイント
- 葉の断面に見られたつくりをスケッチする。
- 葉の裏側の表皮に見られたつくりをスケッチする。
ポイント
根から茎を通って葉のもとまで運ばれた水は,その後どうなると考えられるか。
中学1学年で,被子植物に双子葉類,単子葉類といったグループがあることを学びました。これらのグループで,水の通り道にちがいがあるかも調べてみましょう。
コケ植物も気になります。 コケ植物は,根,茎,葉の区別がないと学びました。コケ植物は,どのように水を吸収するのでしょうか。仮根は関係しているのかな?
よい疑問を見つけましたね。その疑問を科学的に探究するには,どのような課題を立てればよいでしょうか。
仮説はどのように考えられる かな。 コケ植物の仮根の部分だけを染色液にひたして,からだの断面を観察したら,どうなるだろう。
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探究3 結果から考察する
結果
図4 探究3の結果例
(a)では,色水(赤色)で染まる部分が水の通る管の集まりである。
A 根や茎には,染色剤を溶かした水に染まった管のようなつくりがたくさん見られた。
B 染まった管は葉の内部で枝分かれしていた。
C 葉の裏側の表皮には,くちびるのような形があって,開いている形と閉じている形が観察できた。
考察
- 根,茎,葉の断面で水が通る管のような部分が見られたことから,根から吸収された水は,管を通って葉まで運ばれると考えられる。
- 水が通る管は葉の葉脈をつくっていて,そこから先は水が葉に染みこんで広がっていくと考えられる。
- 葉の表面の裏側にはくちびるのような穴の開いているつくりがあり,水はここから出ていくのではないか。
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2 道管と師管
探究3で染色された部分は,吸収された水が通った管であり,これを【道管】という。植物の茎には,道管のほかにも,葉でつくられた養分が通る管もあり,これを【師管】という。
道管と師管は何本もまとまって束のようになっており,この部分を【維管束】という(図6)。維管束は,根から茎,葉につながっていて,植物が生命を維持するために必要な物質を運ぶ役割がある。
3 植物のからだのつくり
植物の器官には,根,茎,葉があり,これらの器官がはたらきあうことで,植物のからだ全体に水が運ばれる。また,一般に植物の茎はかたくしっかりしていて,根とともに植物のからだを支えるはたらきもある。
道管の壁は,もともと丈夫な細胞壁が, さらに厚くなってできています。
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4 蒸散
葉の表皮には,ところどころにくちびるのような形をした一対の細胞がある。これを【孔辺細胞】といい,この細胞に囲まれてできた小さなすき間を【気孔】という(図7)。
根から吸い上げられた水の大部分は,水蒸気となって気孔から空気中に出ていく(図8)。植物のからだから水が水蒸気となって出ていくことを【蒸散】という。蒸散が主な原動力になって,根から水の吸い上げがさかんになり,水❶が植物全体にいきわたる。
蒸散によって空気中に出ていく水蒸気の量は,気孔の開閉によって調節されている。多くの植物では,気孔は葉の表側よりも裏側に多く見られ,昼に気孔が開いて蒸散がさかんに行われる。夜には気孔が閉じて蒸散はほとんど行われない。
図7 ホウセンカの気孔
❶ 植物は,水とともに水に溶ける物質も取り入れていて,これらも植物の養分になる。このような養分は無機物であるため,葉でつくられるデンプンなど(有機物)と区別して,「無機養分」とよばれる。小学校で肥料とよんでいた物質は無機養分である。
ニュース
※科学ニュースの更新は2025年4月を目処にはじまります。
- 【じつは車輪を持つ生物が存在していた!】 2023年3月1日人間が移動する手段として,「車輪」は非常によく使われています。しかし,生物の中で移動手段として車輪を採用しているものはなぜかほとんど存在しません。 その理由としてよく言われるのが「車輪はデコボコ道が苦手だから」ですが,デコボコのない空中を飛ぶ動物に,プロペラで飛ぶものはいるでしょうか? 実際に車輪などの回転構造をもつ生物としては,べん毛をスクリューのように回転させる大腸菌や,魚の表皮にあるケラトサイト(細胞内にラグビーボールのような構造があり,それが回転することで動く)などが挙げられます。このような回転構造の致命的な弱点は,血管をつないで酸素や養分を送ることができないこと。だからこそ,回転構造をもつ生物は,微小なものに限られているのでしょう。 もと記事リンク
- 【顕微鏡を通して出会う,美しい世界】 2023年3月1日理科の実験でもおなじみの顕微鏡。さまざまな顕微鏡を通して見た美しい世界を集めたニコンの顕微鏡写真コンテストが今年も開催されました。 最優秀賞は「ライブオーク(ブナ科コナラ属の常緑高木)の気孔とトリコーム(表皮細胞の毛状突起)」。小さな葉の裏に,深海の生物のようにも見える不思議な世界が隠れていることを,美しい写真で切り取っています。 身近なタマネギの皮もサクランボの茎に生えたカビも,顕微鏡をのぞくことでガラリと姿を変えます。芸術の秋,ミクロの世界の美しさを鑑賞してみてはいかがでしょう。 もと記事リンク コンテスト公式サイト(英語)