※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.118>
1|電解質
1 原子の構造
原子は,図1(ア)のように+の電気をもつ原子核と,− の電気をもつ電子からできている❶。原子核は,原子の中心にあり,そのまわりに電子が存在する。また,原子核は,+の電気をもつ陽子と,電気をもたない中性子が集まってできている。
陽子1個がもっている+の電気の量と,電子1個がもっている − の電気の量は等しい。原子の中の陽子の数と電子の数が等しいので,原子全体としては陽子と電子がたがいの電気を打ち消し合い,電気を帯びていない状態になっている。
また,同じ元素であっても,原子によっては中性子の数が異なることがある(図1(ア)(イ))。このような原子どうしを同位体という。原子核の陽子の数が同じであれば,原子の性質はほぼ同じである。
2年生で学習した「元素」とは,同位体をまとめてよぶときの用語です。元素の化学的性質は陽子の数にもとづいて決まります。
同位体の種類のちがいを元素記号で表すための書き方があります。₈O の「8」は陽子の数,¹⁷O の「17」は中性子と陽子の数の合計です。つまり中性子の数は9 です。
元素によって自然界に存在する同位体の種類とその割合は決まっている。%で示した数字は,元素全体に占める各同位体の数の割合である。
❶ 静電気は物質の間を電子が移動することによって起こる。また,導線の中には自由に動ける電子があり,これが電流の正体である。このような現象が起こるのは,原子が電子をもっているからである。
❷ 出典:NIST Physical Measurement Laboratory
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資料 周期表
1年生の物質の区分で学んだ「金属」とは,金属の元素からなる物質である。金属は固体の状態で,「電気と熱を伝えやすい」「金属光沢がある」「延性や展性がある」という特徴がある。ランタノイドやアクチノイドは性質が似ている元素をまとめたよび方であり,アクチノイドはすべて放射性物質である。
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図2のように,塩化ナトリウム水溶液には電流が流れる。この現象を,原子のモデルを用いて,どのように科学的に探究できるだろうか。
探究1 電流が流れる水溶液
電源装置につないだ電極を蒸留水に入れても,電流は流れません。同じように,固体の塩化ナトリウムも電流が流れません。しかし,塩化ナトリウム水溶液には電流が流れます。これはどのようなしくみでしょうか?
図2 物質に電流が流れるか調べる実験
電流が流れる水溶液には,何が関わっているか。原子や電子のモデルで説明する。
「物質が水に溶ける」とは,物質をつくっている粒子がばらばらになることだったね。
回路には電流が流れるね。水溶液の中でも電流が流れるとはどういうことだろう。
電源装置が必要だね。電流の大きさもはかりたいな。
水に溶ける物質を集めて試してみよう。
電気が流れたとき,水溶液にはどんな変化が見られるかな。
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準備
塩化ナトリウム水溶液(5%),砂糖水(5%),塩化銅水溶液(5%),塩酸(5%),水酸化ナトリウム水溶液(5%),エタノール水溶液(5%),蒸留水,50cm³ビーカー(8),電極,電流計,電源装置,豆電球,クリップつき導線,洗浄びん,保護めがね
各班であつかう水溶液を分担する。それぞれの水溶液や蒸留水に電極を入れて,3〜6Vの電圧を加え,水溶液に電流が流れるか調べる。
注意!! 酸性やアルカリ性の水溶液は,目に入ると危険なので,保護めがねをかける。手に触れたりしたら,すぐに大量の水で洗う。換気をよくして実験を行い,発生する気体を吸いこまない。
ポイント 水溶液に電極を入れる場合は,そのつど,蒸留水で電極を洗ってから使用する。
図3 探究1の結果例
- 水溶液に電流が流れるということは,電子が流れているのだと思う。
- 2年生の静電気の実験で,電子だけが移動することを学習した。これをもとにすると,溶質から電子が出て水の中に広がったという考えはありえる。
- 電流が流れる水溶液では電極で化学変化が起こっているようだ。
電子は原子から出たのかな。電子が出た原子はどうなるのかな?
物質は水に溶けると,電子を出すようになるのかな?
2 年生で,原子は「化学変化によって,それ以上分けられない」と学びました。これは,かつて原子という考えが広まったときの決まりです。しかし, その後研究が進み, 今では原子がp.118図1 のような3 種類の粒子からできていることが知られています。
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2 電解質と非電解質
塩化水素や塩化ナトリウム,塩化銅などは水に溶け,その水溶液には電流が流れる。一方,砂糖やエタノールなどは水に溶けるが電流は流れない。水に溶けたときに電流が流れる物質を電解質といい❶,水に溶けたときに電流が流れない物質を非電解質という。
電解質を溶かした水溶液に電流を流したときの電極の変化について,どのように科学的に探求できるだろうか。
探究2 塩化銅水溶液の電気分解
探究1で塩化銅水溶液に電流を流したとき,電極のまわりが黄色くなったり,気体が発生したりしたよ。これは何が起こっているんだろう。
2年生で水の電気分解を行いましたね。図3(b)も電気分解の一種です。また,塩化銅の化学式はCuCl₂です。これをもとに考えてみましょう。
塩化銅水溶液を電気分解しているとき,水溶液の中では何が起きているか。電極に現れる物質から考える。
水の電気分解では,陽極からは酸素,陰極から水素が発生したよ。塩化銅水溶液も何かに分解されるのかな。
電極は電気を帯びているんだよね。どちらが+で,どちらがーだったかな。
電極を入れかえたら,発生する物質も入れかわりそう。これを,原子が帯びている電気で説明できないかな。
まずは探究1と同じように,電気分解を行えばよいね。
発生する気体の予想をもとに,安全に気をつけて実験しよう。
電極から現れる物質を確認する方法を思い出そう。
❶ ぬれた手で電化製品にさわると感電する危険があるのは,手の汗や水道水にも電解質がふくまれているからである。
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準備
塩化銅水溶液(5%)❶,炭素棒電極(またはえんぴつのしん),発泡ポリスチレンの板,100cm³ビーカー,電流計,電源装置,クリップつき導線,スポイト,ペトリ皿,薬さじ(プラスチック製),ろ紙,赤インク,保護めがね
電気分解のとき,電源装置の+極につないだ電極を「陽極」,−極につないだ電極を「陰極」といいます。炭素棒やえんぴつのしんは導体で,ここでは電極として使用します。
1.塩化銅水溶液に電流を流す
図のように実験装置を組み立てて,0.5Aの電流を流す。
電流を流しているときの陰極や陽極のようすを観察する。
注意!! 換気をよくして実験を行う。
2.電極に発生する物質を調べる
陰極に付着した物質や,陽極付近の液の性質を調べる。
注意!! 直接,鼻を近づけてにおいをかがない。手であおぎよせるようにしてかぐ。
❶ 質量パーセント濃度
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3.電極をつなぎかえる
陰極と陽極を逆につなぎかえて変化のようすを観察する。
注意!! 実験後の塩化銅水溶液の処理は,先生の指示にしたがう。
ポイント
- 陰極,陽極で生じた物質には,どのような性質があるか。
- 陰極,陽極をつなぎかえたときに,どのような変化が起こったか。
ポイント
- 陰極,陽極と生じる物質にはどのような関係があるか。
- 原子のモデルで水溶液の中のようすを考える。
電極で電子の移動する向きを考えよう。その向きは電流の流れと逆だよね。−の電気を帯びているのは陽極だろうか,陰極だろうか。
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探究2 結果から考察する
図5 探究2の結果例
- 陰極に付着した物質は,赤色で金属光こう沢たくがあることから銅であることがわかる。
- 陽極で発生した気体は,特有の刺激臭があることや,赤インクの色が消えたことから塩素であることがわかる。
- 銅は陰極から現れることから,水溶液中で,銅の原子が+の電気を帯びたものに変化しているのではないか。
- 塩素は陽極から現れることから,水溶液中で,塩素の原子が − の電気を帯びたものに変化しているのではないか。
「+の電気と−の電気は引き合う」「+と+の電気,−と−の電気はしりぞけ合う」という性質からこう考えました。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.125>
3 電気泳動
探究2のように,電解質の水溶液に電圧をかけて電解質を分解する方法を電気分解という。また,図8のように,水溶液中の物質が電圧をかけたときに移動する現象を電気泳動という。
探究2の電気分解では,陰極側に塩化銅水溶液中の銅が引きつけられ,陽極側に塩素が引きつけられている。このことから,水溶液中の銅は+の電気を帯びており,塩素は−の電気を帯びていることがわかる。また,図8の電気泳動では,青色のしみ(+ の電気を帯びた銅)が陰極側に動くので,水溶液中に+の電気を帯びた粒子があることがわかる。
このように原子が電気を帯びたものをイオンという。
電気を帯びた塩素原子は色を示さないので図8の実験では確かめられませんが,陽極側へ動いています。
図8 塩化銅水溶液の電気泳動
ニュース
※科学ニュースの更新は2025年4月を目処にはじまります。
- 【水と化学的に同じはずの「重水」は甘かった】 2023年3月1日原子核に中性子が1個多く含まれている重水素を含む「重水」は,水と同じH₂Oの化学式で表されます。重水も通常の水も化学的には全く同じ組成なので,同じ性質をもつはずです。しかし,重水を実際になめた人々からは「重水は甘く感じる」と言われていました。 本当に重水は甘いのかについて,今回実験が行われました。その結果,不思議なことに,マウスは重水の甘味を感じていないのに,人間にとって重水は「甘い」と感じられることが分かりました。 もと記事リンク 論文