※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.198>
1|地球をつつむ大気
1 地球をとりまく空気による圧力
私たちは日常生活で感じないが,空気には質量があり,重さ(空気が受ける重力)がある。そのことは図5 の方法で確かめることができる。さらに,探究2 のような方法で空気を入れて密閉した容器の中の空気を減らすと,容器が外の空気によって押しつぶされることがわかる。このように,空気中にある物体の面は空気の重さにより常に押されている。
探究2 空気の重さによる現象
準備
準備ペットボトル(500mL),簡易減圧器
① ペットボトルの口に簡易減圧器を押し当て,減圧器のハンドルを引く。
② ペットボトルの変化を観察し,その変化の原因を考える。
〔ペットボトルが押しつぶされるしくみ〕
中の空気が減ることにより,中の空気が外側に押す力よりも,外の空気が押す力のほうが大きくなり,ペットボトルが押しつぶされる。
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力が面にはたらくとき,力が一定でも,はたらく面の面積によって力のはたらきは変化する(図6)。その関係をどのように定量的に表すことができるだろうか。
図6 力のはたらきを大きくする・小さくするくふう
探究3 力・面積・力のはたらきの関係
準備
レンガ(2.5kg),スポンジ(ポリウレタン製),台ばかり,ものさし,実験用スタンド
$$ 圧力〔Pa〕=\frac{面を垂直に押す力〔N〕}{力がはたらく面積〔m^{2}〕} $$
① 台ばかりの上に,いろいろな向きに変えたレンガを置き,レンガが台ばかりを押す力の大きさを調べる。また,それぞれの面にはたらく圧力を求める。
ここではレンガにはたらく重力と,面積の関係を調べます。レンガの質量は一定でも,その力がはたらく面積は異なりますね。
② スポンジの上に向きを変えてレンガを置き,それぞれの場合のスポンジのへこみ方を調べる。
❶ ニュートン毎平方メートル。
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探究3 では,力が一定でも,力が押す面積が小さいほど,力のはたらきが大きくなることがわかる。
このような面を押す力のはたらきを表すときは,単位面積(1m²や1cm²)当たりの面を垂直に押す力の大きさで表すと都合がよい。これを圧力という。圧力は次の式で求められ,単位にはN/m²❶またはパスカル(記号Pa)を用いる。1Paは1m² の面を垂直に押す力が1N のときの圧力(1N/m²)である。
$$ 圧力〔Pa〕=\frac{面を垂直に押す力〔N〕}{力がはたらく面積〔m^{2}〕} $$
2 大気圧
地球をとりまく空気を【大気】といい,大気の層を【大気圏】という(図8)。大気圏の厚さは数百km で,上空にいくほど空気の密度が小さくなり,しだいに真空に近くなっていく。
大気圏の中でも,雲ができるなどの気象現象が起こるのは地上から高さ約11km ❷までの層の中である。この層の中では,空気の温度は上空へいくほど低い。
❶ 「ニュートン毎平方メートル」とよむ。大気の層(大気圏)大気の層の厚さは数百km 程度地球の半径約6400 km
❷ この高さは,赤道付近では約17km,中緯度(→ p.224)では約11km,極付近では約9km である。また,季節によっても変わる。
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大気が面を押す作用を【大気圧(気圧)】という。大気圧の観測では,圧力の単位に【ヘクトパスカル】(記号hPa❶)を用いる。海面と同じ高さにおける大気圧は平均すると約1013hPa(101325Pa)であり,これを1 気圧という。
大気を上空に向かって切り取った「空気の柱」というモデルを考えると(図9),標高の低いところほど,上にある空気の層が厚くなるため,空気の柱が長くなり,大気圧は大きくなる❷ことがわかる(図10)。
大気圧は,大気中にある物体のあらゆる方向からはたらいている。また,大気圧は高度によって変化するだけでなく,空気の温度によっても変化する❸。そのため,地表でも大気圧は常に変化している。
❶ 1hPa=100Pa,hPaのhは接頭語といい,単位の大きさを表す。
❷ 逆に,高い山に登ると,気圧が下がり,からだが大気中の酸素を取りこみづらくなる。それによって頭痛などの症状が出ることがあり,これを高山病という。
❸ 空気が冷えて体積が減ると,「空気の柱」の中に,より多くの空気が入れるようになる。すると空気の密度が大きくなり,大気圧が大きくなる。
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資料 大気圧を定量的に求める
① 注射器のゴムの部分の直径をはかり,大気圧がかかる部分の面積を,平面の円の面積(A)として求める。
② ピストンにビニルひもをしっかり結ぶ。
③ ピストンを注射器にもどし,いちばん下まで押し下げておく。
④ 一人が注射器をしっかり押さえ,もう一人がビニルひもにばねばかりをかけ,ばねばかりをゆっくり上に引き上げる。ピストンがゆっくりと上がっている状態で,注射器を押さえている人が,ばねばかりの目盛りを読む。
注意!! 力いっぱい引き上げると,ピストンが急にぬけて危険である。ゆっくりとばねばかりを引き上げる。また,ピストンが注射器の上まで達してぬけそうになる前に,注射器を押さえている人が声がけし,引き上げることをやめるようにする。
結果例
面積(A)の異なる注射器で,ばねばかりの値の平均を求めると,いずれも大気圧の値は約10万Paになる。注射器の面積(A)のちがいによって,ばねばかりの値は異なるが,単位面積当たりの大気圧で考えると,一定であることがわかる。
ニュース
- 【雹(ひょう)のできるしくみ】 2023年3月1日5月末以降,長野県や関東など各地で激しい降ひょうが発生しています。中にはピンポン玉ほどの大きさのひょうも確認されており,農作物や建物などへの被害も発生しています。 この「ひょう」,同じく氷が降ってくる現象である「あられ」と何が違うか,ご存じでしょうか。 記事によると,氷の粒の直径が2mm~5mmのものを「あられ」,直径5mm以上のものを「ひょう」と気象用語では使い分けているとのこと。また,ひょうは積乱雲の中で育った氷の粒なので,夏などあたたかい季節に多く,たいていの場合に雷を伴います。氷どうしが雲の中でぶつかることで雷のもととなるエネルギーが生まれるという説もある……など,ひょうについてちょっと詳しくなれる記事です。 もと記事リンク
- 【「標高2150mで閉めたステンレスボトルを地上で開ける方法」,あなたならどうする?】 2023年3月1日普段は意識することのない「気圧」。しかし,地上のあらゆる場所で逃れることのできない気圧は,時に大変な事態をもたらします。 2017年7月に旧Twitter上に投稿されたつぶやきも,そんな悲劇のひとつでした。なんと,標高2150メートルで熱湯入りの保温ボトル(ステンレス製)の蓋をしっかり閉め,そのまま山を下りてしまったというのです! 事態に気が付いたのは標高10メートルの自宅。標高差が大きい上に,時間経過で中の温度が下がっているため,蓋はびくとも動きません。さあ,どうする? さまざまな珍案・奇案の中から,つぶやきの投稿者さんが取った手段は「ボトルをあたためる」でした。なんとか開けることには成功したものの,保温ボトルで熱が十分に伝わらなかったためか,圧力に耐えきれず蓋が壊れたそうです。気圧の大きさを実感しますね。 もと記事リンク