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あたためても『膨らまない』金属

私たちの身のまわりにある物質は,温度が上がると膨らむ性質をもっており,この現象を熱膨張といいます。例えば,線路の金属の間に切れ目が作られているのも,夏場に膨張する性質のためです。熱膨張は,温度が上がると原子の振動が激しくなり,原子どうしの間隔が広がることが原因で,原理的にはすべての物質が影響を受けてしまいます。しかし,人工衛星やハイテク機器などの精密な世界では,ごくわずかな変化が故障や誤差の原因になることがあるため,この影響を回避するのが大きな課題となっています。
今回,ウィーン工科大学などの研究チームは,マイナス270~167℃という非常に広い温度範囲で,大きさがほとんど変わらない新しい合金を開発しました。この合金の秘密は,内部の成分をわざとムラがあるように混ぜたことにあります。ムラがあるように混ぜることで,この合金では温度が上がると,熱膨張に関わる“熱で伸びようとする力”と,原子レベルで磁気の性質が変わることで生まれる“縮もうとする力”が同時に発生することがわかりました。この2つの力が綱引きのように絶妙に打ち消し合うため,全体として形が変わらない『ゼロ膨張』が実現したのです。この画期的な材料を使うことで,宇宙空間のような過酷な環境でも正確に動く装置や,より高性能な電子機器が作れるようになります。今回の発見は,理論と実験が協力して生まれた,未来の科学技術を支える大きな一歩として期待されています。

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